
気になるセールストークがあります。
化粧品でもファッションでも家電製品でも、販売員の方が商品について説明してくれる時、よく口にする言葉が
「これとても良いので、私も買って使っているんですよ」
販売員としてでなく、一個人として商品に信頼を置いていることが伝わる強力な言葉ではあります。
ただし、いろいろな店でたびたびこのセールストークを聞かされるので違和感を覚えます。
「私も使っています」は事実なのだろうか、と。
販売員が本当に身銭を切って購入しているのかを確かめたいわけではありません。
もしその言葉が嘘ならば、すぐにでもやめさせるべきだからです。
嘘のセールストークが生まれる理由
あなたの会社は、販売員がお客様に
「この商品はとても良いので、自分も買って使っています」
と伝えることを強制しているのでしょうか。
スタッフに自社商品を実際に購入させた上で、こうした営業トークをさせている会社もあります。
しかし、スタッフが本当は使用していないにもかかわらず、愛用していると虚偽の内容を言わせているなら、会社として明らかに不適切な行為です。
それにしてもなぜ、嘘をついてお客様に買わせようとするセールスが常態化するのでしょうか。
こうしたセールストークが誰の指導によって実行されているのかはともかく、根本的には経営者に原因があるでしょう。
お客様にとにかく買わせよう、買わせるためなら何をしてもいい、とトップが思っていると、その感覚が社員にも及ぶのです。
経営者は「自分はそんな指示をした覚えはない」と思うかもしれません。
しかし、本心からお客様に誠実に向き合う経営者の会社では、不心得なセールストークがまかり通ることはないはずです。
きれいに聞こえる建前を社員に伝えながら、心の中では別のことを考えていると、その経営者の本音が社員の行動となって表れるのです。
経営者は、自分の本心と、それが社員に及ぼす影響を今一度見直すべきでしょう。
嘘が平気になる
お客様に嘘をつくという邪道を社員に強いている会社は、より根深い問題を抱えることになります。
セールスの場面で社員が日常的にお客様に嘘をついていれば、嘘をつくことに慣れっこになり、同僚にも上司にも嘘をつくようになってもなんら不思議はありません。
その裏返しで、社員に向けた経営者の言葉も上司の言葉も、自社のセールストークと同じでどうせ嘘だろう、と思って聞くのもまた当然です。
自社の中は、人に平気で嘘をつける社員、人の話を嘘だと思って聞く社員だらけになっていくでしょう。
不誠実な態度の報いは、遅からず自分たちにはね返ってくるのです。
もしあなたの会社が販売員に嘘を言わせているとしたら、誰のためにもならないビジネスをしているということです。
追伸:
経営者が今ここで見直すべき問題

脇田 優美子
