
企業の崩壊はどこから始まるでしょうか。
きっかけとしては、急激な市場の悪化や天変地異など外的要因もあるでしょう。
しかし、真の原因は、目に見える現象の裏で起こっている内的崩壊にあります。
不祥事なども元をたどれば同じところから発しています。
企業が崩壊する始まりは、経営者の心に巣食う疑いです。
経営者をむしばむ疑いの心が、かかわる人々まで疑心暗鬼に引きずり込んでしまうのです。
疑いの感情ほど人間関係を危うくするものはありません。
疑いとはたとえば、相手が自分を陥れようとしているのではと思い込むことです。
経営者が目の前の人間に対して、自分を裏切ろうとしているのではという目で見れば、相手もその視線に気づきます。
経営者の疑いが事実と反するなら、相手にとって心外というほかはなく、社員や取引先が離れていくのも無理はありません。
そうなると、かねてから相手を疑っていた経営者は、やはり自分の思った通りだった、などとますます歪んだ見方を強めていきます。
こうなるともう悪循環で、心ある人が次々と去っていき、もはや崩壊を止めることは非常に難しくなるでしょう。
なぜ疑うのか?
困難な状況下において、経営者の心の中でなぜ疑いの感情が頭をもたげてくるのでしょうか。
それは、経営者が経営者として、肚をくくることができていないからです。
経営者がもっとも疑っているのは、実は自分自身のことなのです。
業績が不振だと景気のせい、販売の悪化は市場環境のせい、社員の不祥事は現場の上長のせい…
こんな調子で、自分はまるで被害者であるかのように振る舞うのも、自分を疑っていることの裏返しの態度です。
経営者の心に被害者意識が棲みついてしまうと、ものの見方が逆転してしまいます。
自分は悪くないのに周囲が自分を陥れていく、と思い込んでいくのです。
冷静に考えたならあり得ないことですが、目の前の現実が厳しいほど歪んだ見方に拍車がかかり、疑いが増すばかりとなるのが人間の弱さです。
経営者が人を信じられなくなったら終わりだということを、経営者は自ら戒めておかなければなりません。
たしかに、事業がうまくいかない時は怪しい人間が近づいてくることがしばしばありますので、そうした輩を見抜く防御は欠かせないでしょう。
しかし、自分の味方であるはずの社員やお取引先やお客様を疑ってしまうのは、自分で自分の首を絞めるのも同じことです。
経営者は、自分の不安に絡めとられてはなりません。
疑いの感情はとめどない不安から生まれてきます。
経営者は日頃から、不安が増幅する手前で、それらを解消する手段を持っておくことが非常に大事なのです。
追伸:
経営者が安心して
経営に集中できる理由

脇田 優美子
