
価格競争に陥っている業界や商品は、使い勝手をひたすら追求しているものが多く見受けられます。
一時期の家電などその最たるもので、使用する機会のほとんどないボタンだらけのリモコンがお客様の困惑を生んでいました。
そこに目をつけて、たとえば高齢者向けに最低限の機能に絞ったスマートフォンを開発してヒットした例もあります。
少ない機能でわかりやすい方が高齢者にとっては快適で安心、という情緒面の価値が支持されたのです。
作り手には、商品はどこまでも機能的に優れていなければならない、という思い込みがあるようです。
そうした意識の呪縛の中では、その思考の枠から外に出た会社だけが、お客様を惹きつけ、ファンを増やすチャンスを手にすることになります。
もし、あなたの会社に新しいファンがなかなか増えず、ブランドがいつまでも育たたないとしたら、あなたが当たり前だと思っている思考の枠の外に出ることを考えましょう。
快適な気分
今、世界は自己実現社会にシフトしています。
自己実現の中には当然、日常生活を快適にすることも含まれています。
たとえば、女性向けのスキンケア商品。
クリームなど高級なものは数万円から10万円を超える商品もあります。
そうした商品の容器は、中身を使い終わったあと処分するのが惜しくなるくらい、豪華なつくりになっています。
実際のところ、高級スキンケア商品には、容器の原価が中身の原価を上回っているものもけっこうあるのです。
これはなぜかといえば、素敵な容器に入っているクリームは効果が高く感じられ、容器を眺めているだけで気分も良くなるからです。
美容に限らず、心理的な期待によって結果が変わることは往々にしてあるものです。
そこで化粧品販売会社では、高級化粧品としての説得力を持たせる目的だけでなく、情緒的な効果も狙って、パッケージに力を入れているのです。
お客様の気分の高揚に重点をおいた商品開発ということです。
他人の目
スキンケア商品と似たようなところでは、アイシャドウや口紅などのメイク用化粧品の例があります。
これらの商品も機能的な要素は出尽くした感があり、新規性を打ち出せる要素を探すのは困難ですが、それでもヒットする商品はあります。
近頃流行っているものは、とにかく見栄えのする凝ったデザイン、お客様の常識を超える斬新なデザインの商品です。
化粧品の中身自体には、ほとんど焦点があたっていません。
この理由は、女性が外出先の化粧直しで口紅やファンデーションを取り出して使う時、周囲の知人や他人の持ち物をさりげなく、あるいは露骨にチェックし合っているからです。
「センスのいい女性に見られたい」
「素敵なものに囲まれて、気持ちよく生きている女性と思われたい」
という女心をつかんだ戦略がヒットにつながっているのです。
自己表現に着目せよ
お客様の自己表現欲求は、いまや家の中でも外でもあふれています。
自社の商品について情緒面を追求しない企業は、社会からやがて置き去りにされるのではないでしょうか。
逆に、もしあなたの商品に情緒的な価値を付加できるなら、価格も上げることができ、競合から抜きん出ることも可能になるでしょう。
これからの商品は、機能と情緒をセットにして考えることが欠かせないのです。
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脇田 優美子
