
経営者にとって、運の良し悪しはどのような意味を持つでしょうか。
自分は運がいい、と公言する経営者は、実は周囲が思うよりはるかに苦労しているものです。
多くの困難を乗り越えた経験がある経営者のほうが、自分は運がいいとおっしゃることが多いのです。
人一倍の苦難の上に確かな歩みを続けている経営者だけが、結果を称して、自分は運が良かったと述懐しているのが実情です。
反対に、自分は運が悪い、と吐露する経営者は、困難の真っ只中にいるからでしょう。
自分は運が悪い、という気持ちの底には、自分はこれだけ頑張っているのに上手くいかない、という苦悩があります。
経営者は八方塞がりの焦りと苛立ちをどこかにぶつけたくとも、誰かのせいにすることはできません。
そうは言っても、不測の事態で事業が困難に突き当たる時などは、経営者も人間ですから、耐えかねることもあるでしょう。
そんな時は、運が悪いとひそかに嘆くことで、追い詰められた心を一瞬だけ放り出すことも必要かもしれません。
運の良し悪しを越えていく
経営者という人生は不確実な毎日の連続ですから、運がいいと思う時も、悪いと思う時もあって当然です。
ただ、どちらにせよ、1つだけ言えることがあります。
それは、自分の身に起こる出来事は、運が良かろうとも悪かろうとも、今の自分に必要な課題が与えられている、ととらえるほうが成長できるということです。
「なぜ自分にばかり、こんな苦労が降りかかってくるのか?」
といくら嘆いたところで何ひとつ問題が消えて無くなることはありません。
反対に、たまたま上手くいっている状態を実力とはき違えて
「自分は運がいい、ついている」
と調子にのってしまえば、何も学ばずかえって危ういでしょう。
経営者は、他の経営者などと引き比べ自分の運の良し悪しに気を揉む必要はありません。
どれだけ大変な問題が起きても、逃げずに誠実に向き合い、必ず乗り越える覚悟で進むことができればよいのです。

脇田 優美子
