
どれだけ意欲的な社員であっても、調子の悪い時はあるものです。
仕事のできる社員が不調に陥ると、他の社員に与える影響も少なくないでしょう。
その社員のこれまでのやり方が通用しなくなってきたのかもしれません。
あるいは取引先とトラブルを起こしてしまったのかもしれません。
もしかすると、家族の問題など私生活で困難を生じたのかもしれません。
いずれにしても、経営者のあなたが日頃からその社員との間に十分な信頼関係を築けていたなら、おそらく社員のほうからあなたに、相談したいことがあると申し出てくれるでしょう。
それがないとすれば、社員から相談をもちかけられるだけの安心感が経営者にない、ということかもしれません。
もちろん、困ったら何でも経営者のところに持ち込んで判断を仰げばよい、というような風潮をつくるのは間違いです。
けれども、ふだんから自分できちんと仕事を仕上げている社員が窮している時は、経営者が関わることで事態の打開を助けることも必要でしょう。
不振の状態が長く続くと、問題によっては取り返しのつかない事になる場合もあり得ます。
ここはまず、経営者であるあなたのほうから声をかけるのがよいでしょう。
何かあればいつでも相談にのる、という経営者からの一言で、社員は話すきっかけをつかむことができます。
責めずに聴く
そして肝心なのは、実際に相談された時です。
「なぜそんなことになってしまったんだ?」
「そうなる前に、どうにかできなかったのか?」
というような詰問口調で応じてしまえば元も子もありません。
経営者に相談などするのではなかったと後悔され、二度と打ち明けてくれることはなくなるでしょう。
仕事のやり方を細かく指導する以上に、心の持ち方やものの考え方の側面からアドバイスしていくことが大切です。
社員の話を遮らずに最後まで聴き、感情もしっかり受けとめた上で
「今からできる最善の対応はどのようなものだろうか?」
「どのようにしたらより良い解決ができるか考えよう」
というように、相手の心を落ち着かせ、励ましながら事態を前進させましょう。
経営者の役割は、不調な社員の気持ちと思考を切りかえるきっかけをつくることです。
経営者に相談することで精神的な袋小路から抜け出せれば、その後は経営者がずっと張り付いていなくても、社員は自分らしさを取り戻し行動できるようになります。
社員の気持ちの立て直しに力を貸すことで、社員からあなたへの信頼もより増していくことでしょう。
追伸:
社員に敬愛される経営者の秘密

脇田 優美子
