
経営者ならば必ず知っておくべき人間心理のひとつに
「人は理屈ではなく感情でものを買う」
というものがあります。
お客様がものを買う時は感情に突き動かされており、理屈は後付けである、ということです。
この心理そのものについては、学んだことのある経営者も多いでしょう。
けれど、果たして実際のビジネスでどれくらい活用できているでしょうか。
知っているだけでなく、マーケティングとして具体的な落とし込みをしなければ、なんの成果にもつながりません。
自社にどうやって生かせるか、ここで考えてみましょう。
刺激を考える
あなたの売っているものが何であっても、その商品やサービスをお客様が知った時、どんな感情が湧き上がれば買ってくださるでしょうか。
お客様があなたの商品を購入するに至るのは、何らかの特定の感情を抱いたからでしょう。
それはどういった感情でしょうか?
そして、その感情を刺激するスイッチはどこにあるでしょうか?
経営者ならば、この2点を突き詰めて考え、スイッチを探り当て、マーケティングに反映しなければならないのです。
スイッチのありか
そうは言うものの、お客様の感情を刺激するスイッチがどうしても思いつかない、という経営者もいらっしゃるかもしれません。
そこで、そんなあなたも今すぐに取り入れられる、効果的なスイッチをここでご紹介します。
それは、人間の五感です。
五感、つまり視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚です。
あなたの会社の商品やサービスを知らしめるに当たり、人間の五感にどれだけ訴えることができているか、早速チェックしてみましょう。
自社は飲食業ではないから、嗅覚や味覚など関係ない、と考えるのは早計です。
例えば、人が長くその場にとどまっていたいと感じる空間には、良い香りが漂い、耳に心地よい音が聴こえているものです。
たとえば、海外でディズニー直営ホテルに一歩足を踏み入れると、どこでもホテルごとに特徴的な良い香りをフロアいっぱいに広げてゲストを迎えています。
これだけで、訪問客は快適になり、滞在客でなくても館内に長くとどまりたくなり、自然と館内で飲食や買い物をたくさんすることになり、立ち去る時も、また再び訪れたいとまで感じるのです。
滞在客ならば、香りの印象づけがより長く続くことになり、リピート客になる可能性も高まります。(実際に私自身がリピート客です)
つまり、香りによって差別化に成功しているわけです。
香りを選べば、オフィスでも十分取り入れられるマーケティングではないでしょうか。
森林浴の香りや、頭をスッキリさせる香りなど、香りも本当に様々ありますから、仕事の場所で香りだなんて、とハナから否定するのは思考が狭く、非常にもったいないことです。
聴覚も同様に、BGMとして取り入れるなら、演奏される音楽に限らず、鳥のさえずりや打ち寄せる波など自然界の音もあります。
心地よいサウンドが人間の心理に影響を与えることは、誰でも体感として知っていることでしょう。
視覚で言えば、目から入ってくる刺激があらゆる感情を呼び起こすもとになるのは、容易に理解できるでしょう。
事務所でも工場でも、整理整頓から視覚的演出まで、幅広く打ち手があることは疑いようがありません。
触覚を活用するとしたら、プレゼンなどで単に説明するだけで済ませず、お客様が触れて確かめられる機会を用意すればするほど、商品やサービスに対する印象を強めることができます。
味覚も重要です。
商談の席でまずいお茶を出されたら本能的に不快になりますし、美味しくて気の利いた飲み物が出てきたら、それだけで気分良く話が進むでしょう。
嗅覚では、営業担当者のスーツが汗やタバコで嫌な臭いを発してしまっていたら、成約するはずの商談も台無しになる恐れがあります。
口臭対策も非常に大事なことは言うまでもありません。
五感による快・不快は、それこそ理屈ではないのです。
だからこそ人知れず感情に訴え、見えないところで結果を左右することになります。
あなたも、自社の商品やサービスにお客様が触れる過程を、くまなく五感でチェックしてみてください。
見落としに気づくだけでなく、きっと意外なチャンスも発見できるはずです。
追伸:
原理原則から経営を見直し
会社の成長を加速する方法

脇田 優美子
