
経営者のあなたは、社員が自分に情報をもたらしてくれた時、既にその情報を他から得ていて
「その話なら、もう知っている」
と答えていませんか。
あるいは、社員がアイディアや提案を伝えに来た時、
「なるほどね、でも…….」
「ふむふむ、だけど…….」
と言って、自分の意見を話していませんか。
このような経営者の態度が、相手にどのような気持ちを抱かせるか、あなたは気づいているでしょうか。
しみついた習慣
「もう知っている」という言葉は、反射的に口に出すことが多いのではないでしょうか。
自分が無能だと思われたくない、見下されたくない、という無意識の反応です。
「なるほどね、でも」や「ふむふむ、だけど」など否定語で返すのも、経営者によく見られる話し方です。
相手の発言よりも自分の考えのほうに価値があると思っていると、そういう話の展開をしてしまいます。
社員に対するこのような話し方の何が問題なのでしょうか。
社員の気持ち
経営者の役に立ちたいと思い、せっかく情報を伝えにきた社員は、あなたから「もう知っている」と返事をされたら、恥ずかしい気持ちになるでしょう。
「余計なことを言うのではなかった」「もう気づいたことを伝えるのはやめよう」と思ってしまいます。
これが何度か重なると、社員の誰もあなたの耳に情報を入れなくなるのは目に見えています。
さらに、社員のアイディアや提案に対して、必ず「でも」や「だけど」で応じる経営者は、相手を否定していることにほかなりません。
どれほど穏やかな口調や表現であっても、要するに、相手の意見より自分のほうが適切だ、と言っているのです。
その後に続くやりとりは、経営者の意見のほうを優先することが前提になってしまい、何も生産的な話につながらず、やる気のある社員から意欲をそいでしまうでしょう。
社員が経営者にアイディアを伝えたり提案を持ち込むたびに、経営者からの指図に取って代わられてしまうのでは、誰からも提案が上がってこなくなるのは必然です。
経営者のプライド
どちらの場合も、経営者の立場にある人間として、相手に負けるわけにはいかないという心理が無意識のうちに働いています。
相手より自分のほうが勝っている、と認められなければ気がすまないのです。
尊敬を得なければならない、有能だと証明しなければならない、など経営者にはプレッシャーがかかっているからでしょう。
そこから出てくる発言や態度のせいで、逆に社員が嫌気を起こしたり、白けたりしてしまうとしたら、この先も続けてよいものでしょうか。
もっとも問題なのは、
「この経営者は、自分が一番でいたい欲求を手放せないんだ」
ということに、社員も気づいてしまうことです。
こうなると、社員は経営者に対して面従腹背、伝えるべきことも伝えず、表面的に持ち上げてやり過ごすのが常になってしまうのです。
裸の王様になりたくなければ、自分のちょっとした発言に潜む心理に、時間をとって向き合ってみてください。
追伸:
経営者としてのあり方に向き合うには
こちらがお役に立つでしょう。

脇田 優美子
