
経営者が集まる勉強会で、人の話を聴く大切さが話題になったことがあります。
その場には、いつも自分が話すことに夢中で、とてもおしゃべりで賑やかな女性経営者が参加していました。
司会者が参加者に向かって
「自分はいつも人の話をよく聴いている、と自信を持って言える人は手を挙げてください」
と聞くと、あろうことか、その女性経営者が自信満々でサッと手を挙げ、その瞬間、周囲からどっと笑いが起きました。
ところが、当のご本人は驚いた顔をして、周りの人達が笑っているのをキョロキョロ見ているのです。
その様子を見た司会者いわく
「皆さん、よくおわかりになったでしょう。
これくらい、自己認識と、周囲の受けとめ方には隔たりがあるということです」
そこで再び皆が爆笑したのですが、その女性経営者は
「えっ?どういうこと?」
というお顔をしたままで、最後まで、皆が笑う理由がおわかりにならないようでした。
この例はまさに他山の石です。
社員はそう思っていない
経営者のあなたが、「自分はこういう人間だ」と思っている自己像と、社員があなたに抱くイメージが正反対、ということは珍しくありません。
人間には誰にもそうした面があるものです。
「自分はいつも社員に対して公平だ」と思っている経営者が、社員からは「えこひいきばかりする経営者」と思われているかもしれません。
「自分はざっくばらんで、社員が話しかけやすい人間だ」と思っている経営者が、社員からは「威圧感が強く、こちらからはものが言えない怖い経営者」と思われているかもしれません。
「自分は誰にでも丁寧に接する人間だ」と思っている経営者のことを、社員は「自分より立場の弱い相手を見下す傲慢な経営者」と思っているかもしれません。
現実によくあることなのです。
自分では気づけない
経営者にとってこれが問題なのは、人は自分のことをはき違えている人物のことを、尊敬に値しないとみなす、ということです。
経営者として、社員から尊敬を得られないというのは明らかに問題でしょう。
それでは、自分で思う自分の姿と、社員の目に映るあなたの姿との乖離に、どうやって気づくことができるでしょうか。
良い方法があります。
あなた自身で、この点は自慢できる、と思う自分の長所を挙げられるだけ挙げてみてください。
たとえば
自分は約束を必ず守る。
自分は思いやりがある。
自分は素直だ。
自分は決断力がある。
自分は繊細でよく気がつく。
自分は相手の気持ちを優先し尊重する。
などなど·····
この自己認識をそのまま、ごく親しい関係性の人に伝えて、本当にその通りだと思うかどうか、尋ねてみてください。
ご家族やパートナーや親友がよいでしょう。
相手から、
「えっ?その逆でしょ」
とか
「いやいや……冗談だよね?」
とか
「本気で言ってる·····?」
と返事が返ってきても、感じたままを率直に伝えてくれているのですから、ぐっとこらえましょう。
ショックを受けたとしても、その意見を受け入れなければなりません。
反論などして自己を正当化しても、何も変わらないのです。
親しい人たちが思っていることは、社員や取引先の人たちも、おそらく同じように思っていると見て間違いないでしょう。
彼らの正直な返事を受けとめて、経営者としてなりたい姿に近づけるよう行動を変えていきましょう。
追伸:
経営者としての理想に向かって
着実に近づきたいなら
この秘訣をまず知ってください。

脇田 優美子
