
「すべて経営の最終判断を下すのは、経営者である自分の仕事だ」
そう認識している経営者が大半ではないでしょうか。
この常識、必ずしも適切とは言えません。
あなたはテレビなどで、食品製造販売企業の新商品企画を目にしたことはありますか。
そういったドキュメンタリーでは、工場の社員の方たちが真剣な表情で見守る中、スーツを着た幹部社員の方々が、若い世代向けの菓子パンやスイーツなどを次々と試食していきます。
経営者として、あなたはこの場面に違和感を感じないでしょうか。
本当に最適な判断か?
私はいつも不思議に思います。
なぜ、想定されるお客様に近い属性の社員などが、試食に参加していないのでしょうか。
若者向け、というスイーツを、50代、60代の男性ばかりが試食したところで、感性も味覚も噛み合っていないのに何を判断できるのか、理解しかねるのです。
人間は年齢相応に好む味覚も変わっていきますから、若年層と中高年男性の味覚がマッチしているとは到底思えません。
ふだんの飲食からして、中高年男性が、若者が好むスイーツや飲料を愛用していることはほとんどないでしょう。
ましてや大企業の幹部ともなれば、外食の価格帯も、世間の基準でいえば相対的に高価格帯のお店を使う機会が多いはずです。
そうした味覚とセンスの男性集団が、若年世代向けの廉価なスイーツの味やデザインにゴーサインを出す決定者となっている事実は、客観的に見るとかなりズレています。
経営者というのは、何でも自分が決断しなければ気が済まないせいで、こうした至極常識的な視点が欠けてしまうのでしょうか。
ある経営者の気づき
これに関連した例で、ある高級和洋菓子製造販売会社の経営者が味覚テストを受けたところ、自分の味覚が鈍いという事実に突き当たりました。
この経営者も、それまでは自身が試作品を試食し発売を決定していたのですが、この現実を受け入れしくみを変えました。
開発中の商品の味の判断を、味覚テストの結果の良かった女性社員に委ねたのです。
ちなみに、味覚というのは飲酒や喫煙の影響によりマヒしてしまうものだそうです。
料理人がタバコ厳禁というのはよく耳にする話ですが、とりわけ食品の製造販売を事業とする経営者であれば、自身の味覚が正常かどうかは大きな問題でしょう。
思い込みを捨てる
経営者があらゆる判断を下すべし、という思い込みは捨てましょう。
経営者が、すべての面で社員の誰よりも優れていることはあり得ません。
経営者自身で判断することが不適切な場合が確実にある、ということをまずは認識することが重要です。
それがどの場面なのかを早く見つけ出し、適任者に権限を移譲しましょう。
最適な担当者に判断を任せることで、業績に違いが出てくるはずです。
追伸:
権限委譲によって
会社をさらに成長させたい経営者は
このヒントを手に入れてください。

脇田 優美子
