
良いと思ったことを取り入れる柔軟性と積極性は、経営者の資質として優れたものです。
しかし、それがもし競合の真似ばかりだとしたらどうなるでしょうか。
追いかけるだけの戦術には、2つの大きな問題があります。
表層的な真似
1つ目の問題として、良さそうだからただ真似るというやり方には、明確な基準がありません。
競合が取り組んでいる企画の真の目的は何なのか。
どういう経緯で生まれた企画なのか。
それを機能させている競合の隠れたリソースは何なのか。
彼らはその先に何を目指して、今そのやり方で進んでいるのか。
これら競合内部の状況はいわゆるブラックボックスの部分ですから、外から競合の打ち手を見ているだけでは本当のところはわかりません。
こうした背景の吟味なしに、単にライバルがやっていて上手くいっているようだから我が社も取り入れよう、という拙速な戦術をとっていくと…
結果、あなたの会社のしくみは、つぎはぎだらけになります。
歯車が回らなくなり、どこを直せばよいのかわからなくなるほど、システムが損なわれてしまいかねません。
急な転落の恐れ
2つ目の問題のほうが、より深刻かもしれません。
自社の強みにかかわらずライバルを真似している場合、たとえ一時的に上手くいっても、長い目で見ると自社を弱体化することにつながっていくのです。
自分たちの強みを生かして考え抜いた戦略戦術であれば、上手くいかない場合でも、どこを修正すべきなのか、改善もある程度機能します。
それでも上手くいかなかったとしたら、自社の本当の強みを見直す契機にもできるでしょう。
そうした努力をせず、楽をしてかたちだけ真似するやり方は、社員の思考停止を招くことにしかなりません。
戦略的に判断する
もし、あなたが経営者として、積極的に外から手法を取り入れて上手くやっているつもりなのに、少しして振り返ると、同じところをグルグル回っているような結果しか出せていないとしたら、立ち止まって考え直すべきでしょう。
安易に真似する戦術が、会社のしくみをいびつにしていないでしょうか。
他社で上手くいっているからといって、それは本当に自社の課題を解決する最適な手法でしょうか。
自社の目指す方向から外れる危険はないでしょうか。
他社の手法を真似することが、自社の強みを失わせることにつながるなら、それは取り入れるべきではないのです。
新しい手法に飛びつくことも同様です。
経営者に焦りがあると、外の情報ばかりに目が向きがちですが、そういう時こそ自分自身と自社の強みに焦点を当てた上で考えるべきでしょう。
そうすることで、本当に自分たちに合う方法を見出せる可能性は高まります。
戦略的に考えるとは、そういうことなのです。
追伸:
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脇田 優美子
