
中小企業の経営者から多く聞かれるのが
「うちには優秀な社員がいない」
「うちみたいな会社にはいい人が入ってこない」
という嘆きです。
ものの道理として、優秀な人がほしければ、優秀な人が入社したくなる会社にする必要があります。
まずは、できるところから改善していかなければ何も変わりません。
優秀な人を見つけるより先にすべきなのは、今いる社員を優秀な社員に育てていくことでしょう。
そうは言うものの、小さな会社の経営者は自らも忙しく、社員教育に多くのコストをかける余裕もないかもしれません。
教育費用をさほどかけずに、社員の実力が上がる方法はあるでしょうか。
自主性に期待?
社員を教育するに当たって、わきまえておいたほうがよい前提があります。
経営者のあなた自身がどれだけ勉強熱心であったとしても、同じような熱心さを社員に求めるだけでは、おそらくうまくいきません。
たとえば、経営者が朝礼などで社員全員に向かって
「これはとてもためになる本だから、ぜひ読んでみてください」
と話したとして、いったい何人の社員が実際にその本を買って読むでしょうか。
意識の高いほんの一握りの社員を除き、ほとんど無反応なのではないでしょうか。
残念ながら、社員の自主性に任せていては、皆が優秀な人材に育つことはなかなか難しいのです。
しかけを作る
そこで、経営者としてこんな提案をしてはいかがでしょうか。
「今日から、自分を高めるために本を買って読んで、感想文を提出してください。
強制ではなく自由ですが、感想文には報奨金を出します。
読み終わった本は会社の本棚に寄付してくれると、皆も読めるのでありがたいです」
社員に対して、給料のほかに臨時に会社から収入を得られるチャンスを与えます。
学びと金銭的なメリットをリンクさせるのです。
本を読むことを勧められて無視する社員は多くても、本を読めば臨時収入が入る、という話を無視する社員はそうはいないでしょう。
仕事に関係のある書籍はもちろんのこと、自己啓発や経営の本、実用書や趣味の本あるいは小説でも、気づきや学びを感想文としてまとめられる本ならば何でもよし、とします。
読書の習慣を身につけてもらい、そこから学びと成長を得てもらうことが目的だからです。
感想文には、単に報奨金を与えるだけでなく、経営者のあなたや上司がコメントを入れて返したり、掲示板に貼りだしたりなど工夫しましょう。
収入が得られ、承認欲求も満たされると、取り組む社員が少しずつ増えてくるはずです。
多くの社員が感想文を出してくれるようになったら、その数を競う特別褒賞なども用意しておくと、さらに熱が高まります。
社員に読書の習慣を身につける報奨金のしくみは、一時的な研修を行うより効果的かもしれません。
個々の社員が、学ぶ意識、自己を高める意識に目覚めれば、社内で優秀な社員が育つ基礎ができてくるのです。
追伸:
経営者の意識が高まるほど
会社は成長を続けることができます。

脇田 優美子
