
経営者は日頃、役員や管理職と会議や報告を通じて接していることがほとんどでしょう。
戦略の策定、計画の進捗状況の説明、決済の依頼など、日々連絡は取り合っているでしょう。
しかし、果たして経営者との業務的なやり取りだけで、役員や管理職が適切に行動し、十分な力を発揮することはできるのでしょうか。
役員や管理職の中には、経営者のあなたにしばしば個別に相談に来たり、メール等の報告頻度の高い人がいるかもしれません。
そういう相手については、仕事ぶりがわかるだけなく、人柄に対する理解も深まってくるでしょう。
他方、会議の場や業務の報告だけでやり取りする相手のことは、意外にもよく知らないままではないでしょうか。
役員や管理職として能力を十分に発揮してもらうには、その人物に対する総合的な理解が欠かせないのですが、ここが手薄な経営者が多いのです。
個人的なメール
それでは、役員や管理職の立場にある人を、経営者がもっと理解するにはどうしたらよいでしょうか。
1つの良い方法が、業務報告ではないメールを交わすことです。
役員や管理職から経営者宛に、気持ちや考えを伝えてもらうようにするのです。
これは、相手と経営者の間で1対1でやり取りすることが秘訣です。
純粋な業務連絡とは異なる上、個人的な事柄も含みますので、他者に読ませるのは相応しくありません。
業務に伴って考えたこと、悩んでいること、自信をつけたことや、家族について嬉しかったことや心配なこと、あるいは自分の趣味に関することや新しく始めたことなど…
要は、その役員や管理職自身について書いたものをメールしてもらうということです。
全く自由に書く形式よりも、ある程度の項目を決めておくほうが書きやすいでしょう。
たとえば
- 今月の振り返り
- 今考えていること
- 嬉しかったこと
- 悩んでいること
- 自分の変化、成長
- 来月の成長目標
など、直接の業務ではなく、今の率直な気持ちや考えていること、将来への思いなどを伝えてもらうのです。
経営者は必ず返信しましょう。
役員、部門長、部長、課長など、役職ごとに頻度を決めたり、メールの曜日を分散したりすることで、人数が多くても実行することは可能です。
彼らへの返信に毎週数時間は要するでしょうが、これこそは経営者としての大事な仕事です。
役員や管理職が少しずつ自己開示してくれるようになると、彼らに対する理解が格段に深まります。
経営者からも返信することによって、人間的な側面からのコミュニケーションが増えます。
すると、経営者の伝えようとしていることが、役員や管理職により正確に伝わるようになるのです。
これは非常に重要な点です。
会議で役員や管理職に対して経営者が大事な内容を伝えたとしても、それだけでは、聴いた全員が経営者の真意をきちんと理解してくれているのか知ることはできません。
経営者の意図した通りに担当部署に伝達し、適切な行動に反映させることができるかどうかもわかりません。
しかし、個人的なメールをやり取りする中で、相手の人柄も仕事への理解度も読み取れるようになると、相手に対してどのように伝えたらよいのか見えるようになります。
伝えてもなかなかきちんと実行されない、という悩みを抱えている経営者の方は少なくありません。
この難しそうに思える課題も、自己開示メールのやり取りを通じて、役員や管理職と相互理解を深めることで乗り越えていけるのです。
追伸:
働きかけによって
会社を成長軌道に乗せた経営者の秘密

脇田 優美子
