
老舗や、歴史ある産地が業績の悪化に苦しんでいる現状を見ていると、両者の不振には共通した決定的な原因があることがわかります。
その不振原因とは、商品の流通経路です。
ただ作って問屋に渡すだけ、代理店に任せるだけという例があまりにも多いと感じます。
その問屋や代理店の販売が振るわないと、自分たちではもうどうにもできない、というあっけない構図です。
業績が好調だった頃の商品力が時代とともに衰えてくるのはいわば必然です。
本来ならば、販売落ち込みの兆しが少しでも見えてくる前に、市場を先取りする商品開発に取り組むべきでしょう。
業績不振の老舗や産地はどこも商品開発が後手に回っていますが、それは、流通経路のせいでお客様が見えないからです。
お客様と直接つながる
商品開発にはお客様からのフィードバックが欠かせません。
お客様と直接つながり、その声をできる限りたくさん集めて分析し、あいまいなところはさらに掘り下げて、その要望や欲求を反映して商品を作っていく必要があります。
それだけでなく、今は消費者のインサイトと呼ばれるような、消費者自身も気づいていない隠れた欲求や本音までも掘り出さなければならない時代です。
いずれにしても、お客様とじかに接することで、自分たちの商品がどのように消費されているのか実態を把握し、ヒントを得ていく必要があります。
ところが、問屋に卸すだけしか流通経路がなければ、自分たちでお客様に触れることができません。
販売代理店頼みにしているのも同様です。
情報収集が間接的では、消費者の欲求をつかもうにも想像の域を出ないのです。
自分たちを見せる
しかも、問屋経由での販売では店頭価格が高くなってしまい、商品の競争力がなおさら低下します。
お客様の本当に求めるものがよくわからず、商品価格も高ければ、売り上げの回復が厳しいのは無理もありません。
これまではさておき、今後は、自分がどこかで直接お客様と接点を持たなければビジネスは立ち行かないでしょう。
まずはできることから始めるなら、たとえば工場見学や産地見学を実施して、とにかくお客様に自分たちの姿をみてもらうことです。
自分たちの作業する様子をじかに感じとってもらい、製品づくりに傾ける情熱を自分たちの言葉で語るのです。
こうした真摯な姿に触れたお客様との間には信頼関係が生まれ、その中から必ずファンになってくれる人たちが生まれてきます。
ファンの人たちは友人や知人に自分の体験を伝えるので、口コミも広がります。
ファンになってくれた人たちに対して、自分たちの商品をもっと良くするにはどうしたらよいか、どんどん聞いていきましょう。
これをずっと続けていくと、改善のアイディアが多数生まれてくるはずです。
さらに、工場でも産地でも、お客様に製造や農業などの体験を提供できるとなおさら良いでしょう。
体験自体に楽しさがある上、お客様とより関係性を深めることができます。
それだけでなく、これまでお客様自身が気づかなかった欲求も、イベントの中から湧き出てくる可能性があります。
先をみれば、工場見学や産地見学、また製造や農業の体験を提供するには、海外からのお客様に対応できるよう英会話による受け入れ準備も必要です。
いきなりは難しくても、少しずつ準備するのとしないのでは後で間違いなく大きな差が出ます。
代理店経由の販売も、ただ商品を渡すだけでなく、代理店のお客様に自分たちの姿を見てもらう方法を考える必要があります。
代理店の現場で販促するなり、それが無理ならば様々な資料を提供するなり、目立つイベントを企画するなりして、自分たちで突破口を開かなければならないのです。
お客様が商品だけ見て買う時代は終わりに近づいています。
誰がどのようにして作ったものなのか、誰のどんな思いが込められた商品なのか、この会社はなぜこれを売っているのか、など…
お客様は、商品の背景を知ってから買っているのです。
商品は作ったところがスタートです。
そこから買ってもらうまでの道を自分たちで切り拓いていきましょう。
追伸:
商品サービスを
お客様に届ける道の築き方

脇田 優美子
