
経営者のあなたは、こんな経験ありませんか。
社員があなたのそばに寄ってきて、それとなく話しかけてきます。
「社長、うちの会社も、もっとこうしてくれたら助かるのですが…」
「今時は、業界的にもこれが普通になってるみたいですよ」
「うちも、もしこうできたら、みんなもっと働きやすいと思うんです」
これ、何のサインでしょうか。
なぜ急に、社員はこんなことを言い出すのでしょうか。
他が気になり始めた
社員が経営者であるあなたに、
「うちの会社の現状を、変えてもらえませんか?」
という意味の話をさりげなく伝えてきた時は、その社員は他社の様子が気になり始めた、ということが考えられます。
どこからか他社の話を見聞きして
「そちらのほうがよほど働きやすそうだ」
「仕事の割に、報酬がずっといい」
などと感じたのかもしれません。
もしかすると、久しぶりに会った友人や知人から、
「うちの社長は、理解があるよ」
などと聞かされたのかもしれません。
何のきっかけもなく、社員が経営者に、遠回しなリクエストをしてくることはない、ということは覚えておくべきでしょう。
経営者のうかつな反応
ところが、社員の遠慮がちな要求に対して、経営者はつい
「うちは大企業とは違う」
「甘えたこと言ってるんじゃない」
「やっぱり厳しくしないと、社員はつけ上がってくるから困る」
「ちゃんと給料払ってるんだから、文句言うヒマがあったら、もっと仕事してほしい」
などと思ってしまうのではないでしょうか。
そして、うかつにも言ってしまいます。
「見てればわかるはず。うちにそんな余裕はない」
「そんな風にやってられるなら、誰も苦労はしない」
「今は人が足りない。そんな話は当分先だろうね」
経営者のこうした返事、あなたが社員の立場だったらどう思いますか。
そして次々いなくなった
社員が経営者に対してリクエストしてきた時点では、社員はあなたの会社にとどまりたい気持ちがあったのです。
社員の立場では、経営者のあなたに向かって、
「あっちの会社のほうが、ずっと働きやすいことに気づいてしまいました」
「あなたにお世話になり続けるかどうか、実は今、迷っている真っ最中です」
などとは言えません。
経営者の答えを聞いた社員は、今度は迷うことなくあなたのもとを去っていきます。
あなたの見方は?
こうした社員の身の振り方は、裏切りでしょうか。
恩知らずでしょうか。
もしその社員が、経営者のあなたが密かに
「辞めてくれたらいいのに…」
と思っていた相手なら、気に留めることはないかもしれません。
しかし、会社にいてほしい社員が次々離職していくとしたら話は違います。
負け惜しみを言っている場合ではありません。
あなたが必要としている社員があなたのそばを離れていくのに、あなたがそのまま変わらずにいれば、事態は悪化していきます。
今では転職は珍しくも何ともありません。
社員は、より働きやすく、より良くいられる職場を選ぶことができるのです。
それはもはや社員の身勝手ではなく、自己実現欲求からきている動きです。
経営者としてあなたは、この流れに積極的に応じるべきではないでしょうか。
追伸:
ほしい社員が集まる経営者は
こんな備えをしています。

脇田 優美子
